2013年10月13日日曜日

展示会の意義



先週は、弊社も出展したIFEXがありました。既存のお客様、新しい潜在取引先、多くの方々とお会いすることができた大変有意義な3日間でした。

しかしながら、その一方、大変残念な現象が起こっていました。
・種苗メーカーの出展が極端に減少している。
・海外の出展者が極端に減少しており、海外からの来場者も減少している。
・小規模ブースの生産者出展が増えている。
つまり、だんだんと、国内向けの市場の内覧会状態になってきている様に感じました。確かにそうなってしまうと、海外の人のIFEXに対する興味は薄れてしまいます。「井の中の蛙」状態で、「アジア最大の展示会」とうたうのはちょっと悲しい感があります。

この方向性が正しいのかを主催者に聞いてみたのですが、主催者はヨーロッパの例を引き合いに出しました。「なぜにオランダのホルティフェアがつぶれて、ドイツのIPMが成功したのか?」主催者の説明では、ホルティフェアはただの商品発表会でIPMは商談会だった、その違いが二つの展示会の成否を分けた、ということでした。これは明らかな間違いです。どちらも「注文を取り付ける場」ではありません。実際は、IPMがヨーロッパ全体をターゲットにした商品発表会であるのに対し、ホルティフェアはオランダ国内を対象にしたローカルな商品発表会であった。それにもかかわらず、ホルティフェアは出展料がIPMよりも高かった。何年も出展者は主催者にこの問題を解決する様に提案してきたのですが、主催者は耳を貸さなかった。という事実を多くのホルティフェアに出展していた会社から聞かされました。

ヨーロッパで重要視されている園芸業界の大きなイベントは3つあります。
・フラワートライアルズ(6月):この種苗会社のトライアルでは、新品種の紹介や技術的な情報発信が生産者に向けて行なわれます。
・アールスメア・オークション(11月):アールスメアの市場の中で行なわれる中小生産者が中心となっているバイヤー向けの商談会です。
・IPM(1月):大手の種苗会社と大手の生産者が中心になり出展している業界のトレンド発信をする展示会です。新しい人に出会える場です。
この様に3つのイベントは全く異なった性質のものであり、各々のイベントの持つ意味は大変大きいです。

さて、このヨーロッパの例と比較してみますと、IFEXの役割は八ヶ岳トライアルや市場の内覧会とは全く異質のものであるべきである事は明確です。主催者や一部の出展者がおっしゃる様な「注文を取り付ける場」でない事は明確で、トレンド発信の場であるべきです。この様な、ニーズと実際のズレが、現在のIFEXの「現象」として出てきている様に感じます。

園芸業界の人であればみんな知っている事ですが、園芸マーケットはこの10年来、極端な縮小傾向にあります。当たり前の事ですが、マーケットを増やすための努力を他人に任せるのではなく私達自らが行なわなければなりません。そのためには、IFEXは最適な情報発信の場です。地域に密着した活動やSNSを通しての情報発信も勿論大事ですが、この様な大きなイベントは、より効率的に多くの人々に情報発信できる最適な場所です。

今回、展示会開催中に他の出展者の方々と話をする機会がありました。現在出展されているほとんどの方々は「IFEXが直接注文を取り付けられる場所」ということに疑問を持たれており、「IFEXは情報発信の場」と捉えている様です。主催者にもどうか私達と同じスタンスに立ち、何のための展示会なのかを今一度よく考えて頂き、「アジア最大の展示会」にふさわしく、国内だけでなく、海外からの出展者・来場者にも魅力のある展示会に発展していって欲しいと強く感じました。

あと、出展料も他に合わせてもっと下げてくれれば尚更良いんだけどね。

2013年9月21日土曜日

“類似品にご注意”って、無理でしょ。



先日、ケルンでspoga+gafaという展示会に行ってきました。ヨーロッパではガーデニング商品に特化した有名な展示会です。各資材会社はこの展示会を大変重要視しており、弊社が代理店を務めるシューリッヒを始め、大手の会社は揃って大々的に出展しています。

そんな中、今回気になったのは、オシャレなデザインのプラスチック商品で有名なelhoの類似商品が、複数のドイツ・メーカー、イタリア・メーカー、スペイン・メーカーなどから、かなりの量が出展されていた事です。中国やアジアの国からの類似品なら分かるのですが、同じヨーロッパのメーカーからの類似品なんですね。まあ、それだけelhoの影響力が大きいからなのでしょうが、どうも節操が無い様に感じました。

そこで、elhoのセールス・マネージャーに、他社の類似品についてどう思っているのか話を聞いてみました。
彼曰く、他社が類似品を出してくるのは仕方が無いことだそうです。「他社の商品は類似品です。弊社がオリジナルです。」と説明して回っても、それだけで説き伏せられるバイヤーはいないそうです。確かに、高級ブランド商品ならともかく、普通の園芸資材でそこまでブランド力を求めるバイヤーもいないかもしれません。

それでは、どの様に類似品との差別化を図っているのでしょうか?

まず、毎年新商品の開発に力を入れているのは当たり前の事ですが、必ずしもヒットする新商品が出るわけではなく、やはり定番商品が売上の中で占める比率は高いそうです。その定番商品を類似品に負けない様に販売する方法は、やはり提案力だそうです。どうすれば小売店の利益が増えるか?どうすれば小売店での管理が容易になるか?どうすれば消費者に楽しんでもらえるか?どうすれば1消費者の購入額が増えるか?などなど、いろんな提案をするそうです。しかも、その提案は、スタッフが一人一人、自分の担当の小売店のことを考えて作るのだそうです。

まあ、当たり前の事と言えば当たり前なんですが、その提案の内容のいくつかを説明して頂き、スタッフ皆さんがすごく勉強されているのが分かりました。


さて、その夜、ホテルの近くのイタリアン・レストランで夕食を食べました。
そのレストランは値段も手頃でそんなに高級店ではないのですが、ウェイターが皆さん、スーツを着て、頭髪をきっちりキメて、ピカピカの革靴を履いて、テキパキ仕事をしているんです。もちろん、サービスも良く、料理もとてもおいしかったです。

そして、そこでビックリする光景を目にしました。出前サービスもしているのですが、なんと出前をする人も同じ様にビシッとした、まるで高級ホテルのルームサービスの様な格好で出前をしているんです。多分、出前を運ばれたお客様は大変嬉しいでしょうね。後でグーグルで調べたら、やはりその地域では一番人気のレストランでした。


高いホスピタリティで有名なディズニー・リゾートやリッツカールトン・ホテルの話にも共通するところがありますが、お客様に喜んで頂くために仕事をしているという事をスタッフ一人一人が信念とし、そのためにみんなが努力をして形にしていく。それが会社の信用となり、お客様に認めて頂ける会社になっていくのだと思います。お客様に認めて頂ければ、類似品が出てきても恐れることはないと思います。

2013年8月25日日曜日

一貫性とチャレンジ



今年も7月8月と沢山のセミナーを受けてきました。7月は主に生産農場の経営、8月は主に園芸専門店の経営。ずっと、いくつのセミナーを受けていると、その年その年によってキーワードが私の中で浮かんできます。今回浮かんできたのがタイトルのこの言葉です。

どの様な会社にも、その会社の基本価値があり、それを一般には「理念」や「一言集約」で現していると思います。そして、それが会社の強み・魅力であるとお客様は認識していると思います。これは不変的なものであり、これがグラグラしてしまったり、変更してしまうと、お客様は不安を感じると思います。ですから、会社は一貫性のある『顔』を維持しなければなりません。

一方、同じ事の繰り返しだけでは、会社は衰退してしまいます。会社には成長が必要であり、そのためには「新しい商品」、「新しい顧客」、「新しい取組」などへのチャレンジが必要になります。何人かの先生方の話を聞くと、会社の新しい取組というのは全体の5%と言う人から12%と言う人まで様々でした。多分、どれも正解なのだと思います。会社によって環境は違うので、それをひとくくりにする事はできないと思います。しかし、「新しい取組が無い」と言う事はあり得ないのです。また、「新しい取組ばかりで、今までのうちとは全く違うんだ。」というのもあり得ないのです。

私達を取り巻く環境は常に少しずつ変化しています。これは人間の人生に置き換えてみると分かり易いのですが、20才から50才になるまでに、自分は随分成長しているはずですし、掛かるものも随分と増えてきます。その間、毎年毎年自分を取り巻く環境の何かが変わり、それに合わせる様に自分も変化し、30年後には大きな変化になっているのです。

さて、弊社の取引先の農場や販売店では「新しい商品」、「新しい顧客」、「新しい取組」の構成比率というのはどれくらいになっているのでしょうか?来期に向けて、どの様な事業計画を立てているのでしょうか?また、弊社はそれをどの様にサポートできるのでしょうか?

奇しくも、弊社では、明日、明後日と丸二日を使い、来期の計画を決めるミーティングが行なわれます。ミーティングでは、全社員が理念の元に自分たちが何をやらなけらばならないかを話し合い、目的実現のために何が必要かを検討します。「学んで思わざれば則ちくらし、思うて学ばざれば則ちあやうし」。当たり前の事なんですが、再認識しました。

2013年6月21日金曜日

見習いたい農場


弊社の苗の仕入先のひとつにイタリアのラッゼリ社があります。この農場は私が好きな農場のひとつで、訪問する度に感心させられます。

まず驚くのは、とにかく綺麗です。会社のルールは簡単で、「病院の様に綺麗にしよう」だそうです。分かり易い言葉です。そして、実際に病院の様に綺麗になっています。

事務棟のなかは本当にチリひとつ落ちていません。


食堂以外での飲食は禁止です。(水のみ可。)私も以前、コーヒーを持って食堂を出ようとして注意されました。


農場内もご覧の通りです。



ハウスの周りも常に清掃しており、やはりゴミはいっさい落ちていません。


工具置場もこの通り。

良い仕事をする為、良い従業員教育の為に、見習いたいと思います。



もうひとつ、この農場の好きなところがあります。
この古いハウスは1954年に建てられた一番最初のラッゼリ社の鉢花用ハウスです。この一番最初のハウスをメンテしながら使う事により、新しい従業員に創業者の気持ちを感じてもらい、モノを大切にする姿勢を教えているのだそうです。

参考になりましたでしょうか。

2013年5月17日金曜日

アメリカの生産者の現状




アメリカの2013 Greenhouse growers White paper (2013年温室花卉生産者白書)が出まして、中身を読んでみました。

この白書の中では、アメリカの生産者を対象にいろんな調査をしています。その中で面白い質問をいくつか紹介させてもらいます。

増殖方法、移植方法はどうしていますか?(複数回答)
1 穂挿し機や移植機を使用  53%
2 播種機を使用       66%
3 手作業での播種や穂挿し  77%
穂挿しの機械や移植の機械を使用している農場が53%もあるんですね。この質問にはコメントが書かれており、移植機は人間の30倍効率が良いそうです。

潅水はどの方法を使用していますか?(複数回答)
1 チューブ潅水    96%
2 手潅水       82%
3 自動散水装置    67%
4 底面給水      33%
チューブ潅水を利用している生産者が96%ってのは驚きですね。意外と底面給水が少ないんですね。

使用した水は再利用していますか?
1 はい  76%
2 いいえ 24%

どういう害虫対策をしていますか?
1 化学的防除のみ           17%
2 化学的防除が中心で、一部生物的防除 64%
3 生物的防除が中心で、一部化学的防除 19%
4 生物的防除のみ            0%

温度調整や照度調整はコンピュータ化されていますか?
1 はい   100%
2 いいえ    0%

この10年間で、品質向上の為に一番注力した事は?
1 施肥プログラム        19%
2 生産過程のオートメーション化 17%
3 培養土            15%
4 隔離農場生産         10%
この質問にもコメントが書かれており、どれかを改善すれば良いのではなく、全てを改善しなければならない、とのことです。

お金があったら何に投資をするか?(順位は書かれていませんでしたが、興味のある答えをいくつか書き出してみます)
ー もっと能力のある従業員を雇う
ー RFIDによる、在庫、受発注、出荷の管理
ー 農場内、事務所内のコンピュータ化
ー 隔離農場を増やす
人材の話は別として、何にしても「オートメーション化」という結論になっている様です。